農業にビジネスと科学の視点を

今回のインタビューは株式会社オリザ 代表取締役 藤井優様です。高付加価値農業の確立を目指し、ミニトマトの契約栽培によるビジネスモデルを展開しておられます。

藤井 優 氏

株式会社オリザ
代表取締役 藤井 優 氏

農業にビジネスと科学の視点を

<プロフィール>
京都大学農学部卒。 食品専門商社入社。 その後、食品メーカーの経営企画室にて、業績管理・システム管理を担当。 2010年4月、株式会社オリザ 代表取締役COO就任

浅井氏・小平氏の立ち上げたオリザ合同会社の株式会社化に伴い、代表取締役兼COOに就任。高糖度のミニトマトの契約栽培により、農業経営者が高収益を確保できるビジネスモデルを展開。マニュアル化した栽培方法の指導と農家同士のネットワーク作りの支援により、日本の農業の改革に取り組む。

Q.25歳時の興味関心、好きだったことは何ですか?

ビジネス/テレビゲーム/食糧問題/経営

●ビジネス
単純にビジネスの仕組みを考えることが面白いんですよ。必ずしも一定のルールがあるわけじゃくて、それぞれが試行錯誤して、持ってるものを有効に使うっていうのは考えてて面白い作業なんです。それに取り組んで結果が出てきたらなおさら面白いですね。商売としての仕組みづくりですかね。当時は食品系の専門商社の企画開発という形でそういうものに取り組んでいました。初めてのことだったので、今までやったことのないことができたことはすごくいい経験になりましたね。規模は20〜30人くらいの会社で、そこでなんでもやらせてくれるっていう環境だったのが良かったですね。また、いろんな人に出会えたことにも感謝しています。仕事は普通にしてて楽しかったんで、それをどんどんやりたいなって感じでした。

●テレビゲーム
家でやってました。それが別にどうってわけじゃないですけどね。ふつうにスキーとかスポーツもしてましたけど、ここで言えるほどしてたわけじゃないんで。

●食糧問題
農学部出身なんですけど、そこで学びたかったことは二つあったんですよ。食糧問題とアメリカの農業です。両方勉強したくて農学部に入ったんですね。仕事柄、アメリカ型の農業にタッチしていたし、現場をみることもできたので、そこに関しては結構満足していてます。もう一つの食糧問題に関しては、日本で食品扱う限りほとんど関係ない世界で。あまりそういったところに接する機会はなかったです。両方興味あって農学部入ったんですけど、一方は満たされないままではありました。なかなかビジネスで解決できるものではないのでね。食糧問題に関してはね。

●経営
純粋に人と人の組織をどうしたらいいかっていうことは楽しいじゃないですか?楽しいって言ったら経営者の人から怒られそうですけど。やっぱり、個々人の力っていろいろあるし、ある程度限定もされている。その中でベストの選択をするっていうのは難しいことだと思うんですよね。それをいろいろ考えるっていうのがすごく面白かったですね。25歳なんて下っ端ですけど、幸い小さな会社なんで、この会社はどうあるべきかなんて考えることも多かったんですよ。大学の時にアイセックというサークルの京都の委員長をやってたことがあって。その経験があったからだとは思いますね。ですが、起業の言うものはあまり考えてはいなかったですね。特に僕がサークルの代表やってる時に意識したのは、ナンバー2になりたいということだったんですよ。結局、世の中で成功してる人には明確なビジョンがないとだめだというイメージがあったので。自分はビジョンがあるタイプというより、組織はどうあるべきかを考える方がすごく楽しいんです。だから、そういうのをどんどんやろうと思うと、独立っていうよりは会社の中で重要なことが決定できるようになりたいなっていうのを思ってましたね。例えばそれが経営者になりたいって目標になったとしても、独立をするとか、自分で会社を起こすっていうのにはつながらなかったですね。

Q.25歳の時に関心のあった社会問題、身の回りの疑問・不安・不満は何でしたか?

食糧問題/変化の少なさ/人材の有効活用

●食糧問題
食品業界で働いてて、やっぱり食品のロスとかすごいんですね。メーカーでは廃棄ロスが結構出てて、それが当たり前のようになる世界なんです。そういうのを見てると問題に思いますよね。一番多感な時期である高校時代に一番関心があったのは食糧問題で、それで農学部に進んだって経緯もありますし。おいしいもの食べたいっていうことで食品業界入ったっていうより、食糧問題に興味があったから食品業界に入ったので。

●変化の少なさ
このころは入社3年目なんですけど、転職を考え始めていた時期なんです。広島に勤務してて東京の人の話を聞くと、いろんな異業種の人と接する中ですごく変化してたりとか、成長してたりして、そういうのを聞くとすごく焦るんですよね。俺はこのままでいいのかなって。やっぱり周りの人から受ける刺激ってすごく大きいと思うんですよ。けど、20人、30人くらいの会社では自分がベンチマークしたい人ですとか、こいつには負けたくないって人はそんなには多くないんですよね。もっといろんな人と会う機会が増えればより多くの刺激を受けて自分も成長していくと思うんで、一つの会社にとどまってていいのか不安になりました。入社3年目は、自分のジャンプアップに対する期待値がすごく小さいことに気付いた時期ですよね。ちょっとこのままじゃまずいって思ってましたね。結局5年目の時に転職して東京の冷凍メーカーの経営企画室に入りました。

●人材の有効活用
みんな個々では工夫しようとしてるんですけど、それが組織の中でうまく使われてないと感じることがすごく多いんですよね。一番多いのが、上司に気を使って思ってることを言わない。そんな状況で仕事してて楽しいわけないじゃないですか?それでは会社の仕組みとしてMAXになるはずがない。みんなやりたいことやればいいし、いいたいこと言えばいい。その中でベストの方法を選んでいけばいいんです。だけどそれがなかなかできない人が多いんです。日本人だからなのか、それとも組織と言うものが本来そんなものなのか。もっとうまく使えばいいのにと思ってましたね。

Q.東京に来てからオリザに参画するまでの流れは?

●児童労働
転職して東京に来てから、アグリビジネス研究会に参加するようになりました。アグリビジネス研究会は、「農業はどうすればいいのか?」、「何が問題なのか?」というところからもう一度考え直そうっていう研究会だったんです。それで、最終的に行き着いたのが、「農業がなぜ儲からないのか?」「農業をもっと胸の張れる職業にしたい」ということでした。日本の農業を変えるチャンスにもなりますし、今オリザがやってるミニトマトの契約栽培のビジネスモデルはそういうのに対する一つのアプローチとしてはすごく面白いなって。そこに対して仕組みをいかにして考えていくのかっていうのが僕の中の興味でもあったので、是非やりたいと思いました。農業で儲かる仕組みを考えたかった。農業にずっと関わっていきたいっていう価値観はずっと変わらなかったですけど、農業の中で一番興味があるのは食糧問題なんですよ。その中で解決できてない問題として日本の農業の問題っていうのがあって、それはアグリビジネス研究会に刺激されたし、解決する方法として有力な手段に取り組んでみようっていう形ですね。

Q.そうこうしているうちにアグリビジネス研究会に参加しながら、オリザは合同会社としてスタートするわけですよね?

そうです。事業もないのに先に合同会社作ったんですよ。もともと、浅井と小平が二人で始めたんです。幸い彼らはコンサルをやってたんで、仕事があれば、事務所とか会社がなくてもいいということで。けど、個人の売り上げとかにすると結構面倒くさいんで、会社を作ろうと合同会社を設立しました。会社を作ったはいいものの主幹事業がなく、このままコンサルで食いつないでいくのも違うと。それだったら、農業のためになるような継続性のあるビジネスということでミニトマトの話が出てきました。去年の夏あたりからテスト栽培を始めてみて。これはうまくいきそうだということで、会社を起こさなければというのが去年の冬ぐらい。そのため、誰かが専属で入る必要が出てきました。僕もその時はどっぷり浸かってたんで、一番の適任者ということで僕が専属の社員に。それが2月末。

Q.その時の迷いや葛藤って?

もちろんありましたよ。前職の冷凍食品メーカーに入社して二年半くらいしか経ってないんで、もう少し残ろうかなとは思ってたんですよ。まだ見習いが終わって、そろそろ本戦力としてでき始めるころかなという時期だったんで、少なくとももう1年くらいはいて、成果を出したいというのはありました。そもそも、自分のキャリアとしては独立するというのは何も考えていないので。全くのゼロというわけではないですけどね。5年ごとに転職して最終的に経営に近いポジションにつければいいと思っていました。だから、3年後ぐらいに転職することは頭の中に描いてはいたんですけど、そこで会社の立ち上げに関わるとか、まして代表になるってことは全然考えてなかったんで、不安ですよね。自分の給料はどうなるかとか。前職の時は人事もしていて、履歴書等を見て二つのポストに入れ分ける仕事などもしていたんですね。仮に自分が独立して失敗して再就職しようとしたら、たぶん僕だったら僕の履歴書見たらダメな方に入れます。1年、2年で潰れた会社の創業者なんて全然信用しないですからね。そのリスクは片道切符だなと思っています。

Q.そうしたリスクを感じながら最終的に選択したということはオリザに何か魅力を感じたから?

感じますよね。やっぱり面白いです。ビジネスのモデルを自分で考えることもできますし。どういう風に仕事をもっていくのかをみんなで考えるのは面白いです。やっぱり既存の会社だと、どう変えていくかっていうことは考えても、どう作るかっていうことには至らないんですね。規模でいったら前いた会社の方がもちろん数字は大きいですけど、幅が圧倒的に広いっていうか。全部白紙なんで、そういう楽しさはありますね。

例えば、前の食品会社なんかは食品を提供し続けることが会社の使命だみたいなところがあるんですよ。新しい会社だからっていうこともあると思うんですが、「儲かる農業というのをみんなで考えて、日本に広げていって、日本の農家を強くしていこう」っていうオリザの発想が、自分の中で非常にしっくりくるものがあるんです。そういう仕事の歯車を自分でどんどんまわしていけるっていうのは楽しいです。
さらに、そういうところに共感してくれる方がすごくたくさんいるので、これは外れていないなと。あと、やっぱりできたトマトがおいしかったことが大きいですね。僕の中でそこは、「おいしいものが作れるから誇らしい仕事だ」って思うんじゃなくて、「これは売れるな。これは売れるから会社としては大丈夫かな。」って思いました。食いっぱぐれの心配はそんなにはしてないですけど、事業として成功しないものはやりたくないんで。やりたいことの方向性が自分にマッチしてるのと、事業としての成功性・精度っていうものがある程度高いという風に自分では思えたんで、やってみようと。
ですが、最初は社長になる気なんて全然なくてですね、代表権がほしかったんですよ。代表権があれば、副社長でも全然良かったですけどね。合同会社なんで最初は共同代表が二人いて、二社長のところに僕が入っていくという形でした。けど、専属で働くのは私だけになるんで、それだったら代表権があった方が仕事がしやすい。それで、三代表でやろうとはじめはなったんですが、周りからすれば「誰がやってるんですか?」ということになってしまう。なので、形式上代表は私一人だけにして、あとの二人はCEOということにししてあります。二人にも会社の方向性についてちゃんと決定権を持っていてほしいのでこのような形にしてあります。アンバランスと言ったらアンバランスな形ですね。ですが、実際役員同士の会議って結構やってるんですよね。だからいい形ではできてると思っています。

Q.事業の形態はどのようになっていますか?

契約栽培という形になっています。具体的には、栽培方法をオリザの中で文書化、マニュアル化し、それを農家の人達に指導して、高糖度のミニトマトを作ってもらう。そして、高糖度のミニトマトができると、それをオリザが買い取って、首都圏向けに販売するといったモデルとなっています。農家に栽培をお願いするわけなんですが、栽培の方法については事細かくオリザの方で考えて、それを守ってもらうと。ただ、そのルールは農家さん同士で意見を出し合って随時更新していきます。さらに、週に一回のミーティングで農家さんの技術に対する疑問点とかをみんなでシェアし、それに対して指導をしたりするという形にしています。農家のネットワークを活かしながら、販売に関してはオリザが引き受ける方式になってますね。

Q.1パックのお値段はおいくらですか?

普通はスーパーだと1パック200円ですよね。それをオリザの場合400円くらいで売りたいと考えています。そのための差別化する方法をオリザの中でストックしていって、農家同士でシェアしていくと。そうすれば、農家さんも儲かるし、やっていて楽しいですよね。いい商品が作れて、都内の高級百貨店だとかスーパーに納品する。そういうモデルを考えて、いろんな農家さんと一緒に協力してやっていきたいです。そうなれば、農家さんにとっても新しい収益源になるし。現状では小さい農家は変わったもの作っていかないと意味がない。だけど、小さい農家が変わったもの作っても規模が小さすぎて、流通には乗らないんですね。それなら協力していくしかないと。協力し合うには、地域で協力するのが一番なんですけど、ひとつの地域には優秀な農家もいれば兼業農家もいて、農家にできる幅って結構限られてるんですよね。そうなると、似たような仲間同士が集まってきて連携するのが一番手っ取り早いわけです。しかも、産地を分散させれば、天候リスクも軽減できるし、ハウスであれば、ある程度の安定性も高められます。ミニトマトをハウス栽培して、産地間を連携することで、ハウスの中の収量が安定し、全国の供給における収量の両方の安定を狙っていく。そういうことをここ1年くらいかけてやってたという感じですね。

Q.目指すべき社会は?

農業ってやっぱり産業として成立してないじゃないですか?補助金ありきだったりとか。それはちょっとだめですよね。郵便事業が破壊されたみたいに、農業も民間の力で成立するようになっていけばなと思います。その一助になれればいいですね。当然難しいところはたくさんあると思います。限界集落などはビジネスだけでの解決は難しいでしょう。それを変えていける社会的企業は世の中に必要だなとは思います。社会的企業で無理なら法的な補助があってしかるべきだし。ただ、そうは言うもののも、日本の農業はダメかっていったら全然そんなことないと思うんですよ。まだまだ可能性はあるはずです。それこそ最適化じゃないですけど、できる人がどんどんやっていく。そういうかたちにしたいですよね。今でこそ農業・農業ってみんな言いますけど、農業で一旗揚げようって人はほとんどいない。けど今はチャンスもいろいろ広がっているし、僕はビジネスとしても農業って面白いと思うんですよね。必ずしも今は追い風が吹いてるとは思わないですけど、逆風が吹き荒れてるとも思わないですね。おいしいものは売れるし、面白いものは受け入れられる。そういう農業をもっと増やしてもいいじゃないかなと思いますね。

Q.社会起業家を目指す方にメッセージをお願いします。

二つあります。
一つ目はピンとくる仕事をすること。私がなんでオリザをやることに決めて今もやっていて楽しいのかというと、農業に関わる仕事ですとか、農業が儲かるようにする仕事に対して、非常に自分がピンと来るものがあるからなんですね。自分の興味のあることだとか、面白そうなこととか、それを最初に見つけるのが大事なんじゃないですかね。世の中に意義のある社会テーマってすごくたくさんあるじゃないですか?いろんなことにアンテナ張ることが大事だと思うし、ニュースに興味を持つっていいことだと思うんですけど、そのなかで一番自分がピンと来るものは何なのかって決めて、そっちの方に進んでみるっていうことが大事なのかなと。それが何なのかを考える。なんでそれなのかだとか。大した理由じゃなくてもいいと思うんですけどね。昔興味あったからとかでもいいし。自分に一番ピンとくるのは何かって考える時間が長い方が人は幸せだと僕は思うんで、それがなんなのかを最初に見極める。明確なビジョンはなくてもいいと思うんですよ。漠然と農業問題とかでもいいですし。性差別の問題とかでもいいと思うんですよ。自分が一番アンテナが高くなる所ってどこかな?って考えてみる。

もうひとつは、なんでもいいから、とりあえず動いてみたらいいということ。そうしたらそれなりの落とし所、いきつく先があるって思うんで。人にはそれぞれ役割もあるし、時の流れとか、機能があると思うんで、別に僕は「起業しましょう」とは思わないし、どういう関わりがベストだとかは思わないんですよ。ていうのは、僕が結構イレギュラーな形でいまのポジションにいるからっていうのもあると思うんですけど。
例えばですけど、人が既に始めてる社会的企業に参画するとかでも社会企業家なんですよ。いろんな事業を始めるってそれなりに優秀だと思いますけど、限られた事業を大きくするっていうのも大事だと思うんですね。ときどき思うのが、同じようなことを考えてる人が世の中にたくさんいるのにどうして一緒にやらないんだろうってことです。
例えば、オリザみたいにある程度の収益性を考えた社会的企業であれば、競合っていうものが存在すると思うんですね。でもホントに社会のためを思ってやるのならば競合って無くなるんですよ。みんな協力すればいいじゃないですか?本当の社会的企業だったら、独立する必要はないんですよ。既にやってる所に入ればいいじゃないですか?ひとつの社会問題に対していろいろなアプローチがあると思うし、必ずしも自分が思ってることをやっている団体じゃなかったりもすると思います。だけど、独立することがいいわけではない。当然リスクを背負うわけなんで。また、社会的企業に就職しなければならないというわけでもなくて。今の会社で働きながら、土日だけそういった活動に参加するんでも全然いいと思うし。いろんなアプローチの仕方があるんじゃないかな?もちろん、起業家の方にはたくさん起業してほしいですけどね。

名称株式会社オリザ
業務内容@アグリビジネス開発事業
A農業経営者支援/技術者育成事業
B農産物・加工食品/農業用資材流通事業
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